平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
ディオンとイアニスが部屋から去っていき、しばらくして、窓の外から丸めた紙が飛んできて桜子の足元に転がる。
ザイダは気づいておらず、隅で刺繍をしている。
困惑しながらも、こんなことをするのはこの宮殿の者ではないと考えて、紙を拾い、開いてみた。
【門へ来い】
桜子は、この指示がイヴァナ皇后のものだと悟る。
イヴァナ皇后に会ってから、一週間が経っていた。業を煮やしているに違いない。
「ザイダ、カリスタに会ってきますね」
「では、ご一緒に」
ザイダは刺繍の布を机に置いて立ち上がる。
「ううん。ひとりで行ってくる。ザイダは刺繍をしていてね」
桜子は不自然にならないように言って、部屋を出た。桜子の向かう先はカリスタの部屋ではなく、門だ。
門へ到着して手紙の主を探すが、アシュアンの衛兵しか見当たらない。そのとき、目の隅に皇都の女官の姿が入った。
桜子は、厩のほうへ向かう木の陰にいる女官の元へ向かった。その女官は、イヴァナ皇后つきの年配の女官だった。
「まだここを出ていないとは。どうなってもいいのか?」
女官は蔑んだ視線で桜子を見て、きつい口調で問う。
「猶予はあのときで一ヵ月ありました。まだあれから一週間です」
「ふん。ずいぶんのんびりしているものだ。皇后さまは気の長い方ではない。早く行動を起こすんだ。そうしなければ、まずあの老婆が犠牲に。その次は誰にするか? お前つきの女官か?」
桜子の顔が歪む。
ザイダは気づいておらず、隅で刺繍をしている。
困惑しながらも、こんなことをするのはこの宮殿の者ではないと考えて、紙を拾い、開いてみた。
【門へ来い】
桜子は、この指示がイヴァナ皇后のものだと悟る。
イヴァナ皇后に会ってから、一週間が経っていた。業を煮やしているに違いない。
「ザイダ、カリスタに会ってきますね」
「では、ご一緒に」
ザイダは刺繍の布を机に置いて立ち上がる。
「ううん。ひとりで行ってくる。ザイダは刺繍をしていてね」
桜子は不自然にならないように言って、部屋を出た。桜子の向かう先はカリスタの部屋ではなく、門だ。
門へ到着して手紙の主を探すが、アシュアンの衛兵しか見当たらない。そのとき、目の隅に皇都の女官の姿が入った。
桜子は、厩のほうへ向かう木の陰にいる女官の元へ向かった。その女官は、イヴァナ皇后つきの年配の女官だった。
「まだここを出ていないとは。どうなってもいいのか?」
女官は蔑んだ視線で桜子を見て、きつい口調で問う。
「猶予はあのときで一ヵ月ありました。まだあれから一週間です」
「ふん。ずいぶんのんびりしているものだ。皇后さまは気の長い方ではない。早く行動を起こすんだ。そうしなければ、まずあの老婆が犠牲に。その次は誰にするか? お前つきの女官か?」
桜子の顔が歪む。