平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
 食事が終わってから少しして、エルマが先ほどの女の子を従えて入室してきた。女の子は桜子と目を合わせないようにして、食べ終わった盆を持って出ていった。

「湯浴み場へ案内するわ」
「あの、着替えを貸していただきたいのですが?」
「用意したわ。ついて来て」

 桜子はホッとした。

 それから寝台の木枠にかけてあったシャツを羽織り、ボタンを留めようとした手が止まる。ボタンが全部なかったのだ。引きちぎられたようだった。

(ボタンの外し方がわからなかった……?)

 エルマはなにも言わずに歩きだす。ここで文句を言っても仕方ない。

 桜子はブラウスの前を押さえながら、部屋を出て廊下を進むエルマの後についていく。

 エルマの言っていた通り、扉の横に警備兵がふたり立っていた。

 廊下の向こう側はガラス戸のないアーチ型の窓がいくつもあり、先ほど見た反対側の景色が望めた。この宮殿の敷地だ。ここと同じ建物がある。下は緑がある中庭である。

 一階に下りたエルマは奥へ進んだのち、立ち止まる。

「ここが女性専用の湯浴み場よ。今の時間は忙しくて誰も入っていないわ」

 エルマは扉を開けて湯浴み場を案内する。銭湯のように脱衣所があり、その先は石の椅子が並んでいた。そこで身体や髪を洗う。奥に湯船がある。

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