平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「きゃっ!」
 
 試合のときに、竹刀を引っ張るものはいない。ふいを突かれて桜子は床に飛ばされる。

「ああぁ……っう……」
「どうした? やはり術を使わねば倒せないのか?」

 イアニスは冷たい言葉を投げつける。

「本当にっ! 竹刀で倒したんです!」

 わかってもらいたいのに、それが叶わない。桜子は自分のほうに放り投げられた竹刀を再び掴んだ。

(竹刀が割れちゃってる……)

 見ればところどころに竹がささくれ立っていた。

「これでは戦えません! 整備しないと使ってはダメなんです。怪我をします!」

 また竹刀を掴まれれば、相手の素手が怪我をしてしまう。

「言い訳はけっこう――」

 そのとき、桜子とイアニスの間に老婆が立った。

「イアニス、止めなさい。お前の目は曇っているようですね。腕を痛めている娘になんということを!」

 聞き覚えのある声に、桜子は老婆の後姿を不思議そうに見つめる。

「おばあさま……」
「この娘は善良だ。それすらわからないとは!」

 老婆は桜子のほうに向き直り、手を差し伸べる。湯浴みのときにいた洗婆だった。


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