平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
 桜子は自分にはけっこう冷たいエルマが、緊張した面持ちでディオンに接するのを見て、背筋がしゃんとする思いになる。

(彼は気軽に話してはいけない方なんだ……それはそうだよね。この国の皇子だし)

 背筋を伸ばした桜子に、ディオンは柔らかい表情になる。

「サクラ、楽にしていろ」
「ディオンさま……私はあなたのような立場の方と接したことがなくて……失礼があったら、すぐに言ってください」

 この世界へ来てから大変な目に遭ったが、ディオンのおかげで今は休むことが出来ている。もっと酷いことになっていたかもしれない。

「か弱そうな娘が男を三人も倒したから、誤解を生んだんだ。安心するといい。ここにはお前を傷つけるものはいない」
「あ、あの、竹刀は返してもらえるのですか?」
「ああ。今は私が預かっている」

 ディオンはかしこまったままの桜子の眉間に指を伸ばした。

「皺を寄せないでいい。綺麗な顔が台無しになる」

 不意の行為で、驚いた桜子の目が大きくなる。

 驚く桜子に、ディオンが小さく首を傾げたとき、扉が叩かれた。

「入れ」

 ディオンの合図に、本を抱えたエルマが入ってきた。そしてディオンに一冊をうやうやしく渡す。


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