平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「ええっ!? そんな……」
「サクラ、座りなさい」

 ディオンはショックを受けた桜子の身体を支えて、椅子に腰を下ろさせた。

「追放だなんて……。ザイダのような女の子が、他の国でやっていけるんですか?」
「わが国ほど住みやすいところはない」

 ベルタッジア国の周りの国は、貧しい国や小国ばかりである。働き口も見つかるかわからない状況だ。桜子の衝撃を受けた様子に、ディオンは詳しく口に出来なかったが。

 しかし、勘のいい桜子は悟り、泣きそうになった。

「ディオンさま、国外追放はしないでくださいっ。私が被害者なんです。被害者の私がいいと言っているんです。だからっ」

 桜子は両手を合わせて懇願する。ディオンならなんとかできる、と。

「サクラ、そなたはとても優しい。しかし、ザイダは罪を犯したんだ。それは償わなければならない。では、失礼する。まだ病み上がりだ。横になりなさい」
「ディオンさまっ!」

 部屋を出ていこうとするディオンに声をかけたが、彼は立ち止まることなく、扉の向こうへ消えた。
 
 桜子のいる後宮から、宮殿の二階にある政務室に戻ったディオンは、美しい織りの長椅子に腰を下ろす。

 愁いを帯びた顔が、余計に近寄りがたさを醸し出す。

 そこへ政務室の扉が叩かれ、イアニスが入ってきた。


< 96 / 236 >

この作品をシェア

pagetop