平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「サクラ、その者はそなたを殺めようとしたんだぞ?」

 ディオンははっきり口にした。

「わかっています。でも、ザイダは本気ではなかったんです。もし殺すつもりならば、部屋に隠し持っていた毒を全部、もしくは最低でも半分は使ったはずです」

 桜子なりに考えたことを話し、わかってもらおうとした。

「サクラの言い分はわかった。先に部屋へ戻っていなさい」

 淡々と告げるディオンに、桜子の顔が歪む。

「ディオンさまっ! お願いです。重い罪にはしないでください!」

 桜子の横にニコが来て、部屋を出るように扉まで付き添われる。桜子は悲しそうな瞳で俯くザイダから、ディオンに視線を移して、裁きの間を出た。

 
 後宮に戻った桜子は落ち着かず、部屋を行ったり来たりしている。

(私がお人好しなの? でも、ひどく罰せられるのはザイダが可哀想……そうよ! 私が被害者なの)

「私が罪を問わないって言っているんだから、それでいいのにっ」

 ベルタッジア国の法律も無視している桜子である。

 そこへディオンが部屋を訪れた。先ほどのものものしい黒長衣ではなく、ペパーミントグリーン色の長衣に着替えている。ベルタッジア国の宮殿にある裁きの間では、あの衣装を身につけることになっていた。

 ディオンに桜子は駆け寄る。

「ザイダの処分は!?」
「おそらく、我が国から追放になるはずだ」

 桜子の黒目がちな瞳が、大きく見開く。

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