今、あいにいく
「ただいまー
………あれ?だれも居ないのかなー?」
人の気配が感じられない静かな店内にはお客さんはもちろん、店主もみあたらなかった。
「あー輝ちゃん!!」
「あっこんにちはひろこさん」
「あらら〜高校の制服きてるとやっぱり大きくなった感じするわね〜!!
むかしはあ〜んなちっちゃかったのにさ!」
ひろこさんは古本屋の向かいにある八百屋の店主で僕が赤ん坊のときから面倒をみてくれていた。
「ハハ…いちょう僕も高校生ですからねー(笑)
ところでさっきから父の姿がみあたらないんですけど…知りませんか?」
「あー!輝ちゃんのお父さんね…なんか麻雀してくるとかいってたな〜
あと、店番よろしくともいっていたよ」
「やっぱりか…
いつも父がすいませんほんとに…」
「いやいや!いいんだよ!!
輝ちゃんも大変ね…あいつはまったくもう…」
「もう慣れちゃいましたから大丈夫ですよ」
「そうかい…?
なんかあったらおばちゃんにいうんだよ??」
「ありがとうございます
じゃあ僕は店番するので…明日あたりお野菜かいにきますね!」
『はぁ〜』
ため息をつきながら自分の家にむかう。
父は自他ともに認めるかなりのクズだ。かなりの遊び人で45歳の今でも彼女が5人いる。全盛期は20人ぐらいいたらしいが…
遊びは女だけじゃ足らず、パチンコや競馬、麻雀といった賭け事も『これはロマンだ…(´<_` )』とかいって店をほっといてふらっとどっかにいっては朝に帰ってくるというのがほとんどだ。そんな奴が店主なのに店が潰れないのは前店主である祖父のおかげであろう。
祖父が経営していた時代。この場所には人がいつもいて、商店街の中心のようなものだった。本を心から愛していた祖父は店内にある全ての本を読破し、場所まで把握していた。それに加えて人懐っこい性格だったため商店街の人間も、その他の人もわざわざ祖父に会いに来て、相談をしたりしていた。あの頃は本達もみんな綺麗にされていて1冊1冊が自分の個性を主張しているようにみえた。
だが父が受け継いで以来、そのような光景をみたことはない。ただのさびれた商店街の中央にある店になりかわってしまった。
< 2 / 8 >

この作品をシェア

pagetop