No border ~雨も月も…君との距離も~
前髪を かきあげながら…シンは 私の濡れた髪に触れて、ズルいくらいに 艶っぽい表情で 私を解放する。

そんな…瞳で見つめるのは…

ズルい。

そんな風に…キスだけで…

ダメに……なる。

うわ言のように、シンの名前を繰り返す私は……それすらも…その皮膚に乱される。

堪えきれなくなった シンの激しさに…

私は私を狂わされる。

「 あぁ……はぁ…お願い…やめ…あぁ…… 」

「 声…出すなよっ…壁、うっすいから… 」

イジワルだよ……。

シンの肩に水滴が弾いて、滑り落ちる…。

その肩で 声を閉じ込めて、イジワルに私に触れて攻めまくる シンに…砕けそうになる。

「 ……あぁ…ん…無理…だよ!‼ 」

やっぱり、ズルい。

無理と言わせておいて……躰は勝手に、もっと…もっと…と求めるように 掻き回す。

そうやって、いつも私を巻き込んでいく…

自分の孤独や不安まで、全部…全裸の私を巻き込んで。

「 シンは…イジワルで…ズルい…。…あ…はぁ…あん…お願い、やめないで…」

「 ……はぁ…イジワルでズルいって…最っ低だなっ(笑) 」

隣の住人との壁に気を使うくらいなら…こんなことしないよぉ~!

私の片手は、必死にシャワーカーテンを握りしめる。

「 紗奈……… 傍に…いて。」

愛してるよ……シン。

シャワーの音が、私の返事を かき消していく。

「 帰るなよ……ずっと…はぁ……ここにいて…。
俺の、側にいろよ。」

私を突き上げながら、そんな事を言うのは……

やっぱり スゴくズルい。

愛してるよ……シン。

声に ならない声で頷くと、私はシンを受け入れる。

さっきまで…泣いていたかと思う彼は、気のせいだったのか…

それって もしかして、まんまとシンの手口に乗せられているのだろうか。

泣いていたクセに、嘘のように 力強くて激しい温もり…。

この 甘えた テロリストに 私は毎回 殺られる。

どうされても…いいとさえ思う。

私の胸で 呼吸するシンの鼓動と…内股を伝う 白濁色の体温と同じ液体に、私は瞳を閉じる。



< 200 / 278 >

この作品をシェア

pagetop