No border ~雨も月も…君との距離も~
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「 ねぇ……シン。」

事務所の裏口にタクシーを停めて 足早に中に入る。

暗い廊下に、夏香の声が響いて それと同時に人感センサーで灯りがつく。

「 ん??えっ!! おい……どうした?」

呼ばれて振り向いた瞬間に……夏香はシンの胸に両手を回す。

ぎゅっと力を込めて抱きしめる。

「 今晩……シンのマンション、行っていい?」

「 ……。無理じゃね。ラジオ深夜だし…その後だってどうなるかわかんねぇし。帰るの朝方だよ。」

「 それでも、いいっ。」

「 どうした…?」

シンは、サングラスを外して 夏香の体をゆっくり放す。

「 シンの傍にいたい……。」

「 …………。今日は 無理だよ。」

「 お願い。 抱いて……シン。 待ってる、私…部屋で待ってるから。」

「 …………。」

「 シン、傍にいて。 私…不安だよ…。」

「 ラムちゃんのことで 不安になってるの?
そんなの……気にすんなよ。 今までだって、誰かと共演するたびに熱愛報道じゃん。
今さら……。」

「 そんなんじゃないっ!…そんなんじゃなくって。」

「 ごめん……最近、忙しかったからかな。
分かったよ。 じゃぁ……なるべく帰るようにするよ。」

廊下の先で 誰かの気配を感じてシンはサングラスをかけ直して 颯爽と歩き出す。

「 ねぇ…シン……。」

「 ……ん? 」

「 “ Pure white you ” もう、歌ってくれないの?」

「 ……なんだよ(笑) 急に……。」

「 ……もう。歌わないつもり?」

「 ……………………。」

「 ……シン。」

「 ……あの曲は、ashの曲だよ。」

「 ……あ…そうだね。 ごめん。変なこと 言って。……ただ……。」

「 ただ? 何? 」

「 シンが、拘っているような気がして…あの曲に。

別に、特別な思い入れがないなら 歌ってもいいような気がして……。

もう、4年も立ってる。

それに他のashの曲は たまに歌ったりしてるし、ash時代からのファンは 皆…あの曲を生で聞いてみたいって…リクエストが多いの……。」

「 ……4年かぁ~。 そんなになるんだぁ。」

「 ねぇ、シン…! 彼女とも4年も立ってる。
それとも…まだ……? 」

「 4年も前の事だよ。
それに……俺は 夏香の傍にいるって言ってるだろっ。

Pure white~が 特別なら、俺にとってどの曲も 特別なんだよ。

あの曲だけに、思い入れがあるわけじゃないよ。」




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