No border ~雨も月も…君との距離も~
誰かが 一人言い出すと 嫉妬の増殖は止められない。 止まらない。

最低な女といる シンは…最悪な男にイメージつけられる。

それが…たった一晩で そうなってしまう恐ろしさを実感する。きっと世の中で なくならないイジメも 同じで…たった一言の囁きに 共感という人間の本能が毒に変わる。

アナフィラキシーショック…みたいなもの。

もともと、嫉妬するのが人間。

たった 1つの針が… たった 一口の欠片が…
全身を蝕む。

殺してしまうことだってある。

シンを…殺してしまうことだってある。
ashを…殺してしまうことだってある。

しかも ひと想いに殺してはくれない。

SNSという……狭くて 広すぎる場所で だだ漏れの悪口に少しづつ傷ついていく。

少しづつ……傷が病になっていく。

1度、火の着いた 愛情という毒はどうやって解毒するのだろう。

とにかく…今できる 最良の処置は、

見ない……ってことだけ。

闇女?病女……だよ。

さげまん……?否定できないよ。 この状況。

シンのことを、思えば思うほど 痛みは増した。

心なんて なければ…こんなに怖がる事はないのかな。…こんなに苦しむ事はないのかな。


BIG4の 外周りの掃除を一通り終えた私は、最後のひとつ……煙草の吸い殻を拾う。

錆び付いた 大きめのゴミばさみで、小さな吸い殻を摘まむと 同時に……

ガシャーン……と、入口の方で派手な物音がした。

慌てて音のした方へ 向かう。

その時に 女の子2人とすれ違うが、ashのライブで見たことのある顔……。

入口の隅に 置いてあった円柱型の灰皿が倒れて、砂ぼこり……ではなく灰の細かい粒子が舞い上がって 黒い煙のように 立ち昇っていた。

女の子のうち 一人が 擦れ違い様に 囁く。

「 死んで。 」

振り返って……睨み付けようと思うけれど 、そのまま 風に散らかる灰を見つめた。

死んで……と言われるほど、私は悪いことをしたのだろうか?

あの子たちの中で……シンは、どれほどの人なのだろうか?

黒い灰が……スローモーションのように こっちに迫り来る。

メジャーでもない 地方バンド ashの ボーカルの人気は、私が思っていた以上で……

小さな街の 会いに行けるアイドルの彼に 彼女は、やっぱり いてはいけない。
それが……最良 なんだ。

最良の解毒……方法。

毒は……私?

「 ちょっと……紗奈。 …………ひどい。 」

鈴ちゃんが オロオロしながら 私に駆け寄ってきた。
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