正義の味方に愛された魔女 5

《そっか~…あっ、出来た!飛んだ飛んだスゴい大成功!……》

「そう言えば、芽衣ちゃんも間違って教えられてたっけ。
『芽衣はコウノトリさんがお空から運んできてくれたの。祐介くんはキャベツの中から生まれたんだって。色んな生まれ方があるみたいね』って。
沙羅が『違うよ、赤ちゃんはパパとママがベッドで一緒に作るのよ』って言ったら
『お人形さんじゃないんだもの、人のお手てで作れるわけないでしょ?』って。
『お手てじゃなくて体で作るんだよ』って教えてあげたら
《体?え?ベッドで一緒に?何それ、わかんなーい、沙羅ちゃん変なこと言うのね…》
…もういいや、って思っちゃった」

「視えないから仕方が無いんだよ。
見たことも聞いたこともない、知らない分からない『未知の事』は、真実を知ることが難しいんだよね。
信頼出来る人からの情報は鵜呑みにしちゃうものさ。
視えないから、経験するまでわからない。
ただし気を付けないと、愛のない行動で得た経験は幸せを生まないんだよね」

「パパ…それ急に難しいよ。何となく解るけど暗いお話?」

「おっと…ごめんごめん。シンプルに行こう!沙羅が知ってる様な『パパとママがベッドで愛情たっぷりに凸と凹を合体させて作る』って言う赤ちゃんの作り方は、教えて貰えないのが一般的で、
男女の違いや「愛情たっぷりコミュニケーション」の話は、オープンに教えられないせいで嘘や妄想が多い分野だってことだね」

《おー!上手く飛ばせるようになったな沙羅ー!》

《でしょー?やっとパパみたいに出来たぁ》

「翔ちゃんに謝るには、またそのお話を蒸し返さないといけないから、やめとく。
でもなんだか嫌われたままで心配~」

「大丈夫だろ?翔也くんはそんな事で人を嫌いになったりしないさ。
ただ、怒りに任せてガーッと言葉を放つのは、これからだんだん無くして言った方がいいね。
でも、まだ仕方ないよ。
そんなの十年後でもなかなか直せないことだから。
パパを悪く言われた気がして怒っちゃったんだろ?
ありがとう沙羅。愛してるよ」

うふっ…(〃艸〃)
パパは時々こうして、ママにするみたいに沙羅にもチュッてしてくれるのです。


ホントはね、翔ちゃんにもしたいんですけどね。
家族じゃないし、パパとママみたいにお互いの気持ちが同じじゃないとね。

「沙羅の王子様は真面目だからなぁ。
軽々しくベタベタするのは好きじゃないだろうな。
でも大丈夫だよ。
ママだって今みたいに仲良くなるまで時間かかったんだ。長期戦でじっくり攻めれば。
頑張れ沙羅!」

「来年から沙羅は北條路の初等科でしょ?
のんびりしてたら翔ちゃんと同じ市立小学校のクラスの女の子に取られちゃうんじゃないかなぁ」

「そーかぁ?
これは白石が言ってた事で、当てにならない「オヤジの勘」ってヤツなんだけど、クラスの女子には好きな感じの子は居そうにないらしいよ?」

「えー?白石さん、なんでそう思うのかなぁ」

「沙羅が聞いてみたらいいんじゃないか?翔也くんに。
同じクラスの女子に好きな子はいるの?って『可愛く』さ。
手なんか握ってニッコリ、ついでにジックリ視てみれば?」

「…無理無理無理無理!むーりー!!」

《真っ赤になって沙耶にそっくりなんだよねー。うん、可愛い可愛い》
出ました!ママが好きな頭ポンポンです。

パパは、おうちにいる時は親バカ全開です。


「ちょっとー!パパも沙羅も、いい加減、上がらないとのぼせるよー?」


こうして今晩も、魔王城の夜はふけて行くのです。
< 13 / 24 >

この作品をシェア

pagetop