エリート御曹司は獣でした
白いローブを纏い、光に包まれて雲の上から地上を見下ろす自分を想像し、似合わないと思ってしまった。

エプロンを着て、右手にトング、左手に焼肉のタレを持ち、肉パーティーを仕切る女神だというのならわかるけれど。


目を白黒させ、半開きの口でポカンとしてしまったら、久瀬さんが苦笑する。


「本心を伝えているつもりなんだが、そんなに信じられない? どうすれば、いいかな……」


私の頬に添えられた右手の親指の腹で、彼は私の下唇をなぞる。

それによって私の意識が唇に集中したら、顎をすくわれ、突然唇を塞がれた。


見開かれた私の目には、閉じた彼の瞼と、スッとした鼻梁がアップで映り、彼の髪から香る旅館のシャンプーの香りを思いっきり吸い込んでしまった。


私、今、久瀬さんにキスされてる……。


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