エリート御曹司は獣でした
それに対して再び大きな笑い声をあげた久瀬さんは、こっちに戻ってくると、長机を挟んで私と向かい合った。

拾ったファイルとビーフジャーキーを、私に返してくれても、まだ笑っている。


楽しそうな様子なので、どうやら、このさぼりに関しては、お咎めなしでいいのだろう。

そのことにホッとして、「肉チャージのこと、他のみんなには秘密にしてもらえませんか? さすがにそれは恥ずかしいので……」と図々しくもお願いしてみたら、彼は頷いてくれた。


「お互い、特異体質のことは秘密にするという契約でいい?」

「はい。私も絶対に誰にも言いません」

「契約成立だな」


そう言って差し出された彼の手と握手すれば、「次の土曜、空いてる?」と普通の調子で予定を問われた。


「日用品の買い出しに行くくらいで特に予定はないです。なにか急ぎの仕事、ありましたっけ?」


休日出勤を頼まれるのかと思ったのだが、首を傾げた私をクスリと笑い、「違うよ」と彼は否定する。


「治療してくれるんだろ? ポン酢、買っておくから、十三時頃に俺の家においで」

「は、はい!」
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