エリート御曹司は獣でした
こういう無邪気な笑い方をするんだ。

いつもの爽やかで落ち着いた微笑みは、作りものなのかな。

笑わせたわけではなく、笑われているだけかもしれないけど、素顔を見せてくれた気がして、なんだか嬉しい……。


「そこまでの肉好きとは知らなかった。相田さんは面白いな」


そう言って笑いを収めた彼は、立ち上がって長机を回り、斜め前へと歩いていく。

なにをするのかと思って見ていたら、私の落としたファイルとビーフジャーキーの袋を拾い上げており、今さらながらに私は慌てた。


仕事をさぼって、肉チャージしていたのがバレてしまう……。


振り向いた久瀬さんが、ニヤリとして、からかうように聞く。


「俺が入ってきた時に隠れていたのは、業務時間中に、これを食べていたから?」

「す、すみません……」


言い当てられてしまっては、謝るしかない。

バツの悪さに体を縮こまらせた私は、彼の顔色を窺いつつ、ボソボソと打ち明ける。


「実は……私も特異体質なんです。二時間おきに肉チャージしないと我慢できない、困った体質なんです」

< 37 / 267 >

この作品をシェア

pagetop