エリート御曹司は獣でした
八重子ちゃんは、クリッと丸い目を細め、ニコニコしながら私の返答を待っている。

一応、褒めてくれたのかな……?

なんと返していいのか正解がわからないので、「ありがとう」とお礼だけ伝えて、それから私はこっそりとお腹の肉をつまむ。

太らない体質だと自分でも思っていたけれど、最近、少々贅肉がついてきた気がして……。


百五十五センチ、四十八キロの標準体型を長らく維持してきたのに、三日前に体重計にのったら、五十キロに増えていた。

やはり肉の食べ過ぎだろうか……。

でもテレビのダイエット番組で、炭水化物は太るけど、タンパク質は問題ないと言っていた。

だから太ったのは、肉ばかり食べているせいではないと思いたい。

食生活を変えずに体重を戻したいから、帰りは電車に乗らずに、二駅分を歩いて帰ろうかな……。


卵形の顔に、小さくも大きくもない奥二重の瞳。平凡な鼻と、平均的な厚みの唇。

どこにでもいそうなごく普通の顔立ちの私なので、なにかトレードマーク的なものが欲しいと思うが、太っているという特徴は嫌だ。


そのようなことを考えて、お腹の贅肉を気にしていたら、「相田(あいだ)さん」と後ろから声をかけられた。

肩までのストレートの黒髪を揺らして振り向けば、そこに立っていたのは、コートを小脇に抱えたスーツ姿の男性社員である。

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