エリート御曹司は獣でした
慌てて駆け寄り、「寒いのにお待たせしてすみません!」と謝れば、「大丈夫だよ」と爽やかな笑顔を向けてくれる。


「相田さん、今日はよろしく」

「はい。気合い入れていきましょう! その前に、これ、お土産です」


彼に渡したのは、コンビニのレジ袋に入れられた肉まんと唐揚げ、フランクフルト、それぞれふたり分である。

今は十三時を過ぎたところで、昼食は自宅で済ませてきたのだが、ハンドクリームを買いに駅前のコンビニに寄ったら、美味しそうな肉たちに誘惑されてしまった。

それを話せば、久瀬さんが明るい声で笑う。

「ありがとう。後で一緒に食べよう」と言って彼は長い足をエントランスに向け、私はその後について行った。


オートロックを解除して、自動扉から中に入れば、前方には狭く無機質な廊下が延びていて、右側にはエレベーターが一機と階段がある。

壁や床に新しさはなく、築年数が三十年ほどは経っていそうなマンションに見えた。

駅から近いので、家賃はそこそこ高いと思われるが、高級感のないごく普通の建物である。


「私が住んでいるマンションと、造りが似ています……」
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