エリート御曹司は獣でした
エレベーター待ちをしながら、何気なく口にした感想に、ハッとした。

大企業の会長の孫である彼は、いわば御曹司。

私ごとき末端OLと住環境が似ていると言ってしまったのは、失礼な気がしたからだ。

「すみません……」と隣に立つ彼の顔色を窺えば、苦笑いしている。


「もしかして、俺のこと、金持ちだと思ってた?」

「ええと……少しだけ」

「祖父母や親は確かに裕福だけど、俺は違うよ」


エレベーターの扉が開くと、中は無人であった。

そこに乗り込み、最上階のボタンを押した久瀬さんは続きを話す。


自分はまだ二十八歳の統括主任で、給料体系は皆と同じ。

彼の親は息子を甘やかさず、当然、生活費は自分の稼ぎのみで賄っているそうだ。

御曹司だからといって、高級なマンションや車を買い与えられているわけではないらしい。

それが当たり前だと思っていることも話してくれた彼は、最上階に到着してエレベーターから先に私を下ろすと、「がっかりした?」と聞いた。

その口調に冗談めいたものを感じたが、私は焦って否定する。
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