エリート御曹司は獣でした
「よろしく」と言った久瀬さんは、私の頭に手を置いてポンと優しく叩くと、通路を歩いて事業部のフロアから出て行った。

それを座ったままで見送った私は、頭に残る彼の手の感触に、にやけそうになる。

ナチュラルなアクションに見えたから、久瀬さんとしては、特別意識しての行為ではないだろう。

彼がそのようなことをする相手は、社内ではきっと私だけ。

くすぐったい気持ちでパソコン作業に戻ろうとしたが、画面右下の時刻を見て、昼休みに入ったことを知る。

周囲もザワザワし始めて、ひとりふたりと、コートと財布を手に席を立っていた。


外食する社員が大半だが、私は今日もお弁当持参で、いつもの四人でミーティングテーブルを囲んだ。

今日のメインは肉シュウマイで、副菜として牛肉のしぐれ煮と、鶏胸肉とアスパラガスの塩胡椒炒め、それとデザート的に、甘口のミートボールを詰めてきている。

ご飯と野菜はごく少量で、肉々しいこのお弁当にツッコミを入れる人はいない。

これが私の、いつものお弁当であるからだ。
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