恋の神様に受験合格祈願をしたら?
 ……もうダメ。
 本当にダメ!
 心臓がもたない。
「えっ? どうしたのニコちゃん。保健室行ける?」
 菅野さんが私の前にしゃがみ込んで、両手を伸ばしてきた。
 私に触っちゃダメ!
 気持ちがいっぱいいっぱいの私は涙ぐんでしまった。
 菅野さんが私をお姫様抱っこで持ち上げる。
 私はもう、菅野さんの顔を見られなくて俯いた。
 お願いします神様。
 この超いたたまれない状態から助けて下さい。
 キュッと目をつぶり、私は両手を握りあわせた。
「保健室に運んでくる」
 真剣な菅野さんの声に、
「いいから下ろす!」
 清水先輩の鋭い声と、
「ニコには刺激が強すぎますから」
 憐れむようなハルちゃんの声と、
「この人、素ですか? 自分のやってること、気づいてるんですか?」
 リカちゃんが誰かに問い詰めているっぽい声がする。
「これは俺でもわかる。全部お前が悪い」
 会長の声が困ったような声が続き、
「なんで? 今すぐ保健室だろ?」
 菅野さんの意味が飲み込めないとばかりの焦り声が続いた。

 会長命令で、短い休憩時間中に菅野さんがオレンジジュースを私に買ってきてくれた。
 リカちゃんやハルちゃんを含めた生徒会メンバー全員が、自分たちにもおごれコールをする中、私だけがジュースをもらってしまい、居心地が悪くなってしまう。
 だからといって、わざわざ買ってきていただいたものを飲まないのは悪くて……。
 チビチビとジュースを飲む私に、菅野さんが「美味しい?」と尋ねてくる。
 会議の続きに参加するため、続々と人が戻ってくる中、私は1番後ろの1番端に座り、隣に座る菅野さんに優しく眺められながら頷いた。
「大志、そろそろ始めるぞ!」
 ホワイトボードの前で、会長が手招きする。
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