恋の神様に受験合格祈願をしたら?
「ニコちゃん大丈夫?」
 真剣な顔で現れたのは菅野さん。
 菅野さんはいきなり私の額に自分の右手を当ててきた。菅野さんの左手は私の腕に添えられる。
「熱はないみたいだね」
 少しホッとした表情を見せた菅野さんが、小さく唸った。
 そして、菅野さんは両手を腿にあて、視線の高さを私に合わせてきた。
「どうする? 今日はもう帰る?」
 心配そうな菅野さんの仁美に、うろたえる私が映った。
「あのっ、私、元気です!」
 菅野さんを心配させたくなくて、私は声を張り上げてしまった。
 菅野さんが固まった。
 あっ、今の私の声、大きすぎたのかな?
「本当に? 無理してない?」
 菅野さんが私に顔を近づけてきた。
 うわっ!
 これ以上近づいたらキスされそう。
 思わず、私は身を引いた。
 途端、
「近すぎ!」
 清水仁美先輩の声がした。
 菅野さんが私の肩へと倒れるように額をのせる。
 えっ?
 何が起きたの?
 それより、肩が……菅野さんがのってる肩がヤケドしそうなほど熱い。
 ドキドキして、心臓が爆発しそう。
 こんなに近づかれたら、心臓の音を聞かれちゃう。
 そしたら私、恥ずかしさで死ねる。
 もう、菅野さんと顔を合わせられない!
「イケメン相手に手加減なしって、男前すぎる」
 ハルちゃんが尊敬するように清水先輩を見つめ、
「いくら好みじゃなくても、イケメンの脳天をあんなに気持ちよく叩く勇気は私にないわ」
 リカちゃんが茫然とした。
 まさか、菅野さんが倒れた原因て、清水先輩ですか!?
「まったくコイツは……。奥手なんだか手が早いんだかわかんないな」
 会長が菅野さんの襟をつかんだ。
 そして、引っぱり上げようとしたけど、
「キャッ!」
 私は思わず叫んでしまった。
 だって、菅野さんの息が私の首筋にかかったんだもん。
 くすぐったいというか、恥ずかしすぎる。
 心臓が……もたない。
 体中が熱くて燃えちゃう。
 もう、ダメッ!
 本当に死んじゃう。
「俺、今、栄養補給中だったんだけど」
 菅野さんが会長にむくれた。
 菅野さんが離れた私は、その場にへたり込んだ。
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