恋の神様に受験合格祈願をしたら?
「練習、ムダになったな」
 リューイチが笑う。
「意外でした。グラビアはボンキュッボン派な大志くんの本命が、わずかなクビレしかないペチャパイのチビとは思わなくて」
 後ろを通り過ぎた1つ下の書記でクールな長身のモテ男、月見浩之ことヒロの語尾に笑いが混ざった。
「るっせーっ! 可愛かっただろうが」
 悔しくて言い返せば、
「ええ、可愛かったですね。大志くんには本当に勿体ない」
 ヒロがサラリと返してきた。
「俺、後ろ姿しか見なかったけど、サイズ的に守りたくなる気持ちはわかったぜ」
 1つ下で、性格は男前なのに背が低すぎてモテない書記のムードメーカー、西宮圭ことケイが俺に親指を立てた。
「サンキュー!」
 俺もケイに親指を立て返す。
「今回の作戦が失敗したってことは、次は『おはよう作戦』ですか?」
 1つ下、地味な切れ者で密かにモテてる会計の江川衛ことマモルが、溜め息をついた。
 『おはよう大作戦』とは、風紀委員のメンバーが委員長と副委員長しか決まっていない現在、他のメンバーが決定するまでの間、校門での朝の挨拶に生徒会も参加するというものだ。
 新入生に顔を覚えてもらうための、生徒会の習わしだ。
「さりげなく朝の挨拶かあ。見た目が王子なお前にさりげなくは無理だろうが、これが終わったらみんなで練習するか」
 リューイチが提案すると、
「僕、もうオママゴトに付き合うのはイヤなんですけど」
 ヒロが露骨に面倒そうな顔をして、パイプイスに腰をおろした。
 俺は立ち上がると、
「天誅!」
 ヒロの頭に手刀をおみまいした。
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