恋の神様に受験合格祈願をしたら?
「ちょっと行ってくるわ」
 南波先生は一度もコーヒーに口をつけることなく、入り口へと向かった。
「ご両親への謝罪についてちょっと」
 教頭先生が小声になった。
「職員室で話しましょう」
 南波先生は教頭に伝えると、教師2人を追い立てるように部屋から出して振り返った。
「菅野、日向さんとここで待ってろ。日向さんをその恰好で帰らせたら確実に風邪を引くからな。お前もだ。時期的にもジャケットを脱ぐにはまだ早いからな。2人とも、家はそう遠くないんだろ?」
「駅3つ向こうです。ただ、俺とニコちゃん、逆方向なんで」
 口を開きかけた私よりも早く、菅野さんが答えた。
 生徒会が終わるとみんなで一緒に駅まで行くから、最寄り駅の話とかした記憶はあるけど、まさか覚えててくれたなんて思わなかった。
「わかった。上の許可をもらって特別に車で送ってやる」
 南波先生がいつもの笑顔を見せた。
 そして、コーヒーはそのままに、ドアの向こうへ消えていった。
< 75 / 116 >

この作品をシェア

pagetop