オジサンに恋しちゃダメですか
「まさか、まだ結婚してないなんて、思ってなかったわ。」

その後も、無言は続く。

アイスコーヒーの中に入っている、氷の音だけが、聞こえてきた。

「……誰か、いい人いなかったの?」

「いい人ねぇ……」

課長の流すような言い方が、私を悲しくさせる。


「もしかして、私以外にいい人がいなかった?」

「アホか。」

そう言って二人で笑っている感じ、私の背中にズシーンと、重い物を乗せてくる。


帰ろう。

こんなところにいたって、憂鬱になる。

私が、席を立った時だ。

椅子の足に、自分の足を、ひっかけた。

「おっ、とっと。」

そのまま、片足で2,3歩、歩いた時だ。

「大丈夫ですか?」

課長の声が聞こえた。

「だ、大丈夫です。」

持って来た財布で、サッと顔を隠す。
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