クールなアイドルの熱烈アプローチ
「でも、巷では憧れのプロポーズって言われてますよ?」

「そうそう、王子様の格好で跪いて、真っ直ぐ気持ちを伝えてくるなんて……」

「「羨ましいよねー!」」

そう言って盛り上がる二人に陽菜は真っ赤になった。
あれから半年経ち、籍を入れた今でもあの時の事を思い出すとドキドキするし、何よりもそれ以上に恥ずかしかった。

「そういえば、あのとき言ってた“名前を呼ばれたのは初めて”って本当ですか?」

「あ、本当ですよ?」

「プロポーズまでに何度か会って話したりデートしたりもしたんでしょう?
今まで何て呼ばれてたんですか?」

「いつも“君”って呼ばれてましたね」

「うわぁ、越名さんらしいと言うか……」

「それでよく会話が成り立ってましたねー」

二人それぞれ感想を話しているのを見ていると陽菜の後ろから突如腕が伸び、次の瞬間には陽菜はその腕に優しく包み込まれていた。
周りの席の人は驚いて小さく声を上げるが、近くにいた拓也が、騒がしてごめんねー。すぐ出ていくから。と申し訳なさそうに話していた。

陽菜が少し後ろを見ると案の定、勇人が陽菜を抱きしめていた。

「越名さん、どうしてここに?」

「移動中。
陽菜の姿が見えたから……我慢できなくなった」

勇人の言葉に陽菜はもちろん周囲の人も顔を赤くする。
拓也だけが甘ったるそうな顔をして、家に帰ったら会えるだろうが。と呟いていた。
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