クールなアイドルの熱烈アプローチ
「ちょっと堀原さんー。
陽菜姉に余計なこと言わないでくれます?」

『……悪かった』

「俺、めちゃくちゃ怒られたじゃないですかー」

誰もいない自室で、朝陽はベッドに座って憮然とした表情でスマホ片手に話す。

新人は芸能人という自覚の足りなさ、逆に人気が出ると天狗になりすぎてプライベートで問題を起こしやすいから、陽菜を護るためにも出来れば小さなことでも教えてほしいと言ってきたのは堀原だ。
だからこそ陽菜と勇人が植物園に出掛けたこと、こっそり後をつけて二人が過ごしていた様子を話したのに、陽菜に思いっきり怒られてしまった。

「もう情報提供しませんよ?」

『……いや、すまない。
植物園での様子を聞いて、もう付き合っているものだと……』

「まだです。
だから、余計なこと言わないでください」

陽菜の初めての恋路を……しかも自分が認められる人物への恋愛をこんなことで邪魔されてたまるかと朝陽は眉を潜めた。

相手はあの勇人だ。
奇しくも、知る人が知ればお互い惹かれあってるのは一目瞭然で、あとは本人達次第なのだから……。

「……とにかく、余計なこと言わないでくださいよ?
俺の野望が潰えるじゃないですか」

『野望……?』

ピンポーンと玄関からインターホンの音が聞こえた。

陽菜は風呂に入っていて、しかもお気に入りの入浴剤を入れていたから暫く出てこないだろう。
朝陽は堀原にもう一度念を押すと通話を切り、玄関に向かった。

「はいはーい、誰ですかー?
……あれ?」

インターホンの通話ボタンを押しながら応答する朝陽は、画面に写ったそこにはいないはずの人物に目を丸くした。
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