ずっと・・・



「だから、それは困る」

「だったら、聞かないで下さい」


そうきっぱり言うと、黙ってしまった。

やっぱり、意味が分からない。

私に固執する理由が。

今まで話したことがないのに、いきなり私の目の前に現れて付き合えとか。

どう考えてもおかしい。

まぁ、それを聞いたところでまともな答えなんて期待は出来ないけど。


「……そうとう深い傷なんだ。
分かった、もう聞かない。だから、隣からいなくなることは許さない」


そう言ったかと思えば、ぎゅっと私の手を握った。


「大丈夫。オレの隣にいれば、何も怖いことはないから」


抱き寄せるようにして、優しい言葉をかけてくる。

そんなに優しくしないで。

勘違いしそうになってしまう。

所詮、偽りの関係なのに。

立場が違うと分かっているはずなのに。

それ以上を求めてしまいそうになる。

震えていた手なんて、気のせいにして。

好きだったなんて気持ち、思い出してはいけないのに。




< 32 / 140 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop