ひとりだと思っていた君へ

駅前のファストフードで須長くんと待ち合わをした。
飲み物とポテトを注文して向かい合わせで座る。
なんとなく深刻さが伺えて心配して来てみたけど、表情はいつもと変わらない。

「そう言えば、最近、美織ちゃんとメールしてるんだけど」
「えっ? そうなの?」
「部活、大変みたいだね」
「うん、先輩が厳しいとか言ってたな」

美織のことで話があるのかと思っていると、須長くんはひとつ呼吸を置くように黙り、
「あのさ、言うか言わないかずっと悩んでたんだけどやっぱり伝えておく」
と前置きをした。

「柚月の気になってる男、どういう奴か知ってる?」
「ハローくんのこと?」
「ハローくん? ああそう呼んでるんだ」
と納得したのかもう一度尋ねる。

「あいつがどういう奴か知ってる?」
「どういう奴って……優しい人だよね」

そう返すと苦笑いをする。
「俺さ、あいつと小学校一緒だったんだよね。
クラスは一緒になったことないけど、周りの男子とかにからかわれる系の大人しい奴って印象だった。
それでさ、まあからかいがすぎたんだと思うんだけど、授業中に急にキレて、彫刻刀で同級生を切りつけたんだよ。
だからまあ……何が言いたいかと言うとキレたら何するかわかんないし、危ない奴だから、関わらないほうがいいと思う。
人って変われないって言うし」

柚月はそこでハローくんの手の甲にあった傷跡を思い出した。
図工の時間に、彫刻刀で切ったっていうか切り付けられたっていうかと濁された言葉の意味が今になってわかった。

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