BRST!



此方の様子を見た昴くんは、安堵したように頬を緩めた。

そして私の左手を、自然な動作で持ち上げる。




「――…、」



薬指に、ぴったりな指輪が通るまで。

彼と私の、この空間に不思議と言葉は要らなかった。




しっかりと目的の指に通された指輪は、煌びやかな光を放っていて。



熱くなる胸もそのままに、そっと視線をリングに合わせていた。

すると。



「っ、」



ちゅ、と。たった今通されたばかりのそれに、惜しげもなくキスを落とした昴くん。



擽るような、それでいて温まるような。

そんな感覚に鼓動を速めていれば、視線を感じてゆっくりと見上げた。



そんな中でも、左手は優しい手に包まれたまま。




「――稜。」




切れ長の瞳が、ダークブラウンの髪の毛から覗く。

陶器のように滑らかな肌に、人工的な光がやんわり射込んでいる。




じっと昴くんを見つめていれば、包まれた手に少しだけ重圧が加わった気がした。


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