BRST!



―――――――――――…



「…、いくぞ。」


バイクを走らせながら今までの経緯の回想に耽っていた俺は、意識を取り戻すと共にそんな声を自分に向けて放った。





現在居る場所は、兄貴の店で。

信頼しているからこそ任せられていた合鍵の管理を――…俺はその"信頼"を、自らの手で壊そうとしている。



これから、"黒い石"を持って"あの女"の元へ向かう。

それは、このペアリングにはめ込まれた"黒い石"が"黒尽くめ"の奴らが持っていたものと同じだと分かったからだ。




稜には新しいリングを渡して、怪しまれること無くこの"曰くつき"のリングを回収出来た。




恐らく"敵"はあの女一人では無いだろう。

そう考えられる状況で俺一人で乗り込もうなんて、馬鹿だと言われるかもしれない。




でも、仕方ないんだよ。

稜は傷付けたくないし、兄貴はあの女を大切に想っている。



分かっていて敵として対峙させるなんて、俺には無理だ。

だったら――…俺が、一人で終わらせられたら一番なんじゃないか。





そこまで考えが及んだからこそ、無謀とも取れる賭けに出ることにした。


< 888 / 945 >

この作品をシェア

pagetop