たぶんこれを、初恋と呼ぶ





 クリスマスイブは、安尾くんと2回目のデートだった。

この前のデートの反省を活かして、服装は大人っぽいワンピースにした。

待ち合わせは駅前の大きなツリーの前で。ベタだけど、そういうのが憧れだった。



ヤリ目かもしれないけれど、大丈夫。

安尾くんは優しい人だから、絶対私に酷い事をしないと思う。


新しい下着を身につけて、大人っぽいワンピースを着て、メイクも研究していつもと少し変えてみたし、プレゼントも忘れずに持ってきた。

大丈夫、大丈夫。



イルミネーションで煌びやかな街を眺めながら、私は安尾くんを待った。

夕方までバイトがあると言っていたので、こんな忙しい日だしもしかしたら遅れてくるかなと思ったけれど、時間通りに安尾くんが現れて、私は彼に駆け寄った。


「安尾くん!」

「梅ちゃん」


安尾くんは急いで走ってきてくれたようで息が上がっていたが、鼻先は赤くなっていて、年上のくせに可愛いなあと、思わずそこに触れた。

思った通り、そこだけ冷たかった。



「あは、冷たい。寒いのに来てくれてありがとう」


そう言ったら、安尾くんは何か言いたげに息を呑んで、俯いた。



「…安尾くん?」

「ごめん、無理だ、俺」

「え?」

「ごめん」



私は、去っていく安尾くんの後ろ姿をただずっと眺めていた。

クリスマスイブの夜。

私は安尾くんに拒絶され、振られた。




 それが高校2年生の冬に3週間付き合っただけの、3人目の彼氏の思い出だ。





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