たぶんこれを、初恋と呼ぶ


「はっ?」

「その腕時計。ここぞって時にしてるらしいですけど、多分貰い物ですよね?女性からの」


江藤といい八嶋といい、何なんだこいつらは。
イケメンは観察眼が優れているのか、それとも俺がわかりやすいからなのか。


「手巻きなのにここぞって時にしかしないって事は、家ではいつも大事に巻いてるって事っすよね」

「……」

「付けてる時はいつも大事そうにしてますし。でも、センスいいですよね、手巻きの腕時計とか。素敵な人なんだろうな」


腕時計の事から彼女と事を褒められて、酔いが回っているのか思わず俺は反応した。



「そう、すげえいい子なんだよ。とにかく可愛くて、ニコニコしてて、何で俺と付き合ってくれたのかってくらい」

「お、先輩がこの手の話してくれるなんて珍しいっすね」

「…俺が年上だから、期待に応えなきゃって思ってたんだけど、相手の理想になれそうになくて、実際の俺に幻滅されたくなくて、俺が逃げたのクリスマスの日に。後で人づてに、その子が『俺と別れた』って言ってたっていうのを聞いて、そこで俺達別れたのかって気付いたんだよ。何それ、別れるとか言わなくても別れた事になるの?俺経験ねーしそういうのわかんなくて。振られたの俺。俺が馬鹿だったんだよ」

「先輩、ちょっと何言ってるのかわかんないっす。結構酔ってます?」

「7年振りに会ったら、相変わらず可愛いし、すげえ綺麗になってるし、何であんなにいい女になってんの。絶対他の男ほっとかないじゃん。てか彼氏いるに決まってんじゃん。俺まだずっと好きなんだよー」

「え、再会したんですか?良かったじゃないですか」

「よくねーよ。くそ、もっとかっこいい俺でいれればよかったのに!」

「先輩は充分かっこいいですって。そろそろ帰りましょうか。ね?」



 記憶が朧げなのだが、どうやら俺は久し振りに悪酔いをしてしまったらしい。

八嶋が俺とアツシさんの分のタクシーを拾ってくれたそうだ。



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