契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
「今日は時間あるのか? ああ、構わない。じゃあ六時ごろ」
約束を取り付け、短い通話が終わる。彰さんはホッとしたように息をつき、無造作にスマホをベッドにを置きこちらを振り向いた。
私は怒られるのを覚悟し、思わずうつむきぎゅっと目を閉じた。……しかし。
「おはよう、結奈」
降ってきたのは優しい声で、そうっと顔を上げたら顎を掴まれて短いキスをされた。途端にぽわんと顔が熱くなり、胸がドキドキと鳴る。
「あの……彰さん、すみません。勝手に電話……」
つい甘い雰囲気に浸りそうになったけれど、早く謝っておきたくて慌てて口を開く。
「いや、別に。俺に電話してくる相手なんて冬樹くらいだから、出られて困ることもないしな。それより俺の方が謝らないと。夕方までに東京に戻らなきゃいけなくなった」
すぐそばで電話の内容を聞いていたので、その理由にはだいたい想像がついた。
「平川さんに会うんですか?」
「ああ。……結奈も一緒に来ないか?」
「え、私……?」
意外な誘いに、思わず自分を指さしてぽかんとする。
だって、妻とはいえ社長同士の重要な会合に同席するなんて、場違いじゃない?