契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
そんな私の不安を察した彼が、先方との意外な関係を教えてくれる。
「平川は古くからの友人なんだ。結奈のことを紹介したい」
「あ、お友達なんですか。それなら……」
すんなり納得しかけて、ふと冬樹さんの言葉を思い出し言葉を止める。
確か、平川さんはただならぬ迫力で〝自分が現れたことを必ず社長に伝えろ〟と言い残したんじゃなかったっけ。
冬樹さんはそのセリフを心配して朝から電話してきたわけだけど……友達ってことは、冗談の一種だったのかな。
表情を窺うように下から彰さんの顔を覗き込むと、「ん?」と不思議そうに首をかしげる彼。
特に隠しごとをしている様子もないし、冬樹さんが彼らの関係を知らなかっただけなのかもしれない。
「……いえ。彰さんの友達なら私もご挨拶したいので、お付き合いします」
私が承諾すると彰さんの表情に安堵の色が浮かぶ。
友達に会うというだけなのに、ひとりではまるで心細かったみたい。
そんな顔をされると、平川さんとはやっぱりただの友人関係じゃないんじゃ、と勘ぐってしまうけれど……まぁ、実際に会ってみればわかるよね。
胸に渦巻く色々な疑問はとりあえず置いておき、せっかくの二人きりの休暇を楽しもうと、心を切り替えるのだった。