契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

毎日がまるで灰色の世界を生きているようで、喜びも楽しみも、悲しみさえもなく、ただ時間の経過に身を任せるだけ。

おそらくあのまま灰色の日々を生きていたら、俺の感情はとっくに死んでいただろう。

そうならなかったのは、ある事件が起きたからだった。

その日、俺が幼稚園に行っている間に、母は自宅でいつもの男と会っていた。

しかし、男の吸っていた煙草の不始末が原因で火事が発生し、俺が帰宅するころには住んでいた部屋が丸焦げになっていた。

母と男は逃げ遅れて命を落とし……俺だけが生き残った。

けれど灰色の世界にいた俺には、悲しいとか寂しいとかいう感情もなかった。

しかし、大人になった今でもマンションに苦手意識を持っているのは、その事件が少なからず影響しているのだと思う。

身寄りをなくした俺は、やがて児童養護施設に送られることになった。

そこにいたのは親がいない子どもたちばかりで、最初はお互いに警戒心が強く慣れるのに時間がかかったが、寝食をともにするうちに俺はある兄妹と親しくなった。

それが同い年の平川叶夢、そして四つ年下の毬亜だった。

「彰! サッカーしようぜ!」

「うん。……俺、やったことないけど」

「大丈夫。簡単簡単」



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