契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
「いや、父さん。俺は、生涯独身を貫くつもりでいるんだ」
基本的に理解ある父親のことだから、きちんと話せば俺の意思を認めてくれるだろう。
そんな甘い気持ちでいた俺に、父親は表情を曇らせ言いにくそうに話し出す。
「彰……悪いが、道重堂の社長になる人間として、それは無理なんだ」
「どうして……」
「まぁ、悪しき慣習と言ってしまえばそれまでなんだがな……社員たちを導く社長ともあろうものが、最も小さな集団……ようは家族を幸せにできなくてどうする、というような考えが、役員たちの間に根強く残っているんだ」
……なんてくだらない。俺は率直にそう感じた。
独身か既婚かで、社長の資質をはかろうとするなんて無理に決まっているのに。
というか、父だってそんなことわかっていると思うのだが。
「父さんも、役員たちと同じ考えなのか?」
「……いや、そういうわけではない。ただ……独身のままだと、古い役員たちがお前を色眼鏡で見るんじゃないかと心配なんだ」
「色眼鏡?」
「ああ。これだから〝養子〟は困る……というような」