契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

なるほどな……。父は、それで俺の立場が危うくなるのを危惧しているらしい。

後継者としてここまで育ててきた俺が、結婚するかしないかという一点のみで判断され、社長としての信頼を失ってしまうのだとしたら……確かにばかばかしいことこの上ない。

だから、こうして結婚を勧めてくるということか。……気は進まないが、親孝行と思うしかないようだ。

「わかったよ、前向きに考えてみる。でも、そういう相手が今現在いないっていうのも本当なんだ。だから、相手を探すところからになるけど」

「それなら任せろ。知り合いに、年頃のお嬢さんがけっこういるんだ。何人か見合いをしてみて、気に入った相手と結婚すればいい」

気に入った相手、か。どうせ本気で好きになることはないから、道重堂という会社をよく理解し、妻として相応の振る舞いをしてくれる相手なら、誰でもいいだろう。

俺はそんな軽い気持ちで、父の知り合いの娘だとかいう女性五人と見合いをした。

しかし五人中五人とも、和菓子には一切興味のない西洋かぶれで、かつタワマン至上主義という困った女たちであった。



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