契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

その後、四人目と五人目とも会ったが、大して変わり映えのない結果で俺はうんざりしてきた。

それは見合いをセッティングしてくれた父も同じだったようで、五人目の相手を断った後、父はしかめ面をして言った。

「彰……結婚に踏ん切りのつかない気持ちもわかるが、いい加減、腹を決めろ。次の見合いで最後だ。……いいな?」

なかば脅しのような強硬手段に出られてしまい、俺は焦りだした。

次の相手もまたろくでもない奴だったらどうすればいいんだ。それでも結婚しろということか? 父も苦しい立場だとは思うが、さすがに強引すぎるだろう……。

見合いの日までは一週間しかなく、かといって何の解決策も浮かばぬまま苦悩の日々は過ぎていった。





そして、翌日に見合いを控えた、七月のある金曜日のこと。

俺は本店の様子をチェックしに行くついでに、兄貴分である倉田に少し愚痴でも聞いてもらおうと決めて、店を訪れた。

周囲の客に「いらっしゃいませ」と声をかけ、黄色い声と熱い視線を受け流しながら店内を進み、従業員にその日の売上げ状況などを聞いた。

そのとき、ひとりの従業員が思い出したように言う。



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