契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
その後、四人目と五人目とも会ったが、大して変わり映えのない結果で俺はうんざりしてきた。
それは見合いをセッティングしてくれた父も同じだったようで、五人目の相手を断った後、父はしかめ面をして言った。
「彰……結婚に踏ん切りのつかない気持ちもわかるが、いい加減、腹を決めろ。次の見合いで最後だ。……いいな?」
なかば脅しのような強硬手段に出られてしまい、俺は焦りだした。
次の相手もまたろくでもない奴だったらどうすればいいんだ。それでも結婚しろということか? 父も苦しい立場だとは思うが、さすがに強引すぎるだろう……。
見合いの日までは一週間しかなく、かといって何の解決策も浮かばぬまま苦悩の日々は過ぎていった。
*
そして、翌日に見合いを控えた、七月のある金曜日のこと。
俺は本店の様子をチェックしに行くついでに、兄貴分である倉田に少し愚痴でも聞いてもらおうと決めて、店を訪れた。
周囲の客に「いらっしゃいませ」と声をかけ、黄色い声と熱い視線を受け流しながら店内を進み、従業員にその日の売上げ状況などを聞いた。
そのとき、ひとりの従業員が思い出したように言う。