契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

平川さんと彼女が兄妹だと聞いてからなんとなく想定していた展開ではあるけれど、彰さんの口から直接伝えてもらった今、ようやく大きな安心感を得ることができた。

これで気になることは、ほとんど聞いたと思うけど……最後の最後、あのセリフに関してだけ確認させてほしい。

「その電話の時、愛してる……ってセリフも聞こえちゃったんですが、あれはどういう意味だったんでしょう」

この流れから考えると、甘い意味ではないのだろう。でも、そうでないとしたら〝愛してる〟だなんて言葉がなぜ飛び出したのか、余計に不可解だ。

「ああ。それはな……商品名だ。vanillaの洋菓子の」

「よ、洋菓子……?」

彰さんが軽く笑って教えてくれた予想外の答えに、目を丸くした。

「毬亜がパティシエだというのは言ったよな? 彼女は腕も確かだが、女性らしい視点でひとつひとつに凝った商品名をつけるのも特徴でな。新作のケーキに〝愛してる〟という名をつけたんだと教えてくれた。その時の会話を結奈は聞いたんだろう」



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