契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

「へえ。どれどれ。私も見たい」

私は野次馬根性で、かりんとうの袋を片手に花ちゃんのもとへ近づく。

けれど、ひと足遅かったようだ。私が窓の下の道路に確認できたのは、かりんとうのごとく黒光りしている、高級外車の方だけ。

「残念。イケメンさんは、もうビルに入っちゃいましたね。でも、ここに入ってる会社であんなイケメン社員見たことないですけど……取引先の人とかかなぁ」

「そんなにイケメンだったんだ」

「はい。あんな人に言い寄られたら、彼氏持ちでも揺れちゃうって感じです」

「え~、なおさら見たかったなぁ」

話しながらかりんとうの袋に手を突っ込み、甘さでべとつく黒い棒をまたひとつ取り出してはかじる。

うん、黒糖の素朴な甘さって、疲れを癒してくれるんだよなぁ……。



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