契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

至福の表情でうっとりしていたそのとき、隣にいた花ちゃんがくいくいと私のワンピースの裾を引っ張って、大事なもぐもぐタイムの邪魔をしてきた。

「なに、どしたの花ちゃん」

「先輩、あ、あれです。さっきのイケメン……」

呆然と彼女が見つめる先は、オフィスの出入り口。

そこには、圧倒的なイケメンオーラを放ちながら、誰かの姿をきょろきょろと探している、長身のスーツ姿の男性……って、あ、彰さん!?

私が気付いたのとほぼ同時に、彰さんもこちらに気がつく。彼は私の姿を認めると、無表情でつかつかと歩み寄ってきた。

やば。そういえば迎えに来るとか言われてたのに、私ってばすっかり忘れてかりんとう爆食してた……!

左手には大量のかりんとうで膨らんだ袋。右手には食べかけのかりんとう。
こんなみっともない状況で彼と再会することになるなんて!

内心冷や汗をかきつつその場を動けずにいると、とうとう彰さんが目の前にやってきて、短く告げた。

「結奈。約束通り、迎えに来た。そんなものを食べているということは、仕事はもう終わっているんだろ?」

「は、はいっ。すみません、のんびりしてて」



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