契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

「お待たせしてすみません。ありがとうございます……」

男性の車の助手席に乗せてもらうなんて初めてのことで、緊張気味に腰を下ろしてシートベルトを締める。

この車、いい匂いがする。この間、着物についていたお香の香りにどことなく近い、上品で安らぐ匂い。

私がくんくん鼻を鳴らしている間に彰さんが運転席に戻ってきて、手慣れた動作で車を発進させながら私に言った。

「ちょっと、ダッシュボード開けてみてくれるか?」

「ダッシュボード? はい、ここですかね」

私は前方に手を伸ばし、押すと上に開くタイプの収納を開けてみた。

そこにあったのは、光沢のある純白のリボンがあしらわれた、小さな楕円の箱。

まるでプレゼントのようだけど、まさか偽物の婚約者にそんなもの用意するわけないだろうし……。

不思議そうにする私に、運転席から彰さんが声をかける。

「すぐ使うことになるから、開けてみろ」

「使う? わかりまし……た」

言いながらパコっとふたを開けた私は、目を丸くした。

楕円の中央でまばゆい光を放つのは、大きさの違うふたつのプラチナリング。

二つセットの指輪ってことは……もしかしなくても、私たちの結婚指輪?



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