契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
「あ、彰さん、こんなものまで用意していたんですか? 婚姻届のことといいずいぶんリアルを追求するんですね」
婚姻届と同じく、これは今夜のご両親との会食をスムーズに進める道具のひとつにすぎない。
そう思っても内心動揺してしまう自分をごまかすように、私は続けて質問をぶつける。
「でも、なんで結婚指輪なんですか? 私が演じるのって、婚約者役でよかったはずですよね?」
指輪も、用意するなら婚約指輪のほうが適当だと思うのだけど。
しかし彰さんは、ハンドルを握ったままでしれっと信じられない発言をした。
「今日の昼間、あの婚姻届を提出してきた。俺たちは晴れて夫婦になったんだ。もとよりそのつもりだったから、結婚指輪も用意していた」
は……? 婚姻届を出した……?
彼の言っていることがよくわからず、目を見開いて固まる。
「何を呆けた顔してるんだ。お前は今日から〝道重結奈〟になった。そう言っている」
「いやいや、そんな簡単に結婚ってできますっけ……? そりゃ、婚姻届は書きましたけど、ほかにも提出しなきゃいけない書類とかありますよね?」