契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
「単純に喜んでくれてるんじゃないのか? ご両親はもともとお前の嫁ぎ先があるのか心配していただろ」
私は大きくかぶりを振った。
「たぶん、それよりも……自分たちが仲良くするのに私が邪魔だったんです。うちの両親、いまだに私の目を盗んで家の中でキスしたりするほどラブラブだから」
そんな理由で寂しさを感じる自分が幼く感じて、ごまかすように冗談っぽい口調で言った。
するとなぜか、彰さんはうろたえた様子でぽつりとつぶやく。
「そんな夫婦が存在するのか……?」
その問いは私の耳にも聞こえていたけれど、むしろ彼が疑問に思うのが不思議だった。
そりゃ、うちの両親のような年齢でラブラブ夫婦っていうのは珍しいケースかもしれないけど、存在を疑うほどではないだろう。
「彰さん?」
彼の長身を覗き込むようにして名前を読んだら、我に返ったらしい彼が「ああ」と曖昧に返事をし、さっきの呟きはなかったかのような様子で門を開け始めた。
なんだろう。彰さんがいろんな顔を使い分けるのには慣れてきたけれど、さっきのうろたえ方は意図したものではなかったような……。