契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

「彰さん、巨峰が好きじゃないからいらないんですって。一緒に買い物したんだからそのときに教えてくれればよかったのに」

巨峰を買ったときは何も言われなかったのに、帰宅してからキッチンの棚に買い置きのこしあんがあるのを見つけた私が『巨峰でフルーツ大福でも作ろうかな』と口に出したときだった。

突然『俺は巨峰嫌いだからいらない』なんて後出しで言い放つものだから、ちょっとむっとしてしまった。

その話をしたら、倉田さんがひとりごとのように呟く。

「そうか……。嫁さんの力をもってしてもダメか」

どういう意味だろう。私は首をかしげて倉田さんを見つめる。

「いや、何でもない。結婚生活はまだ始まったばかりだからな。彰のこと、よろしく頼むよ」

気にしないでくれというふうに軽く笑った倉田さんを、それ以上追及はできなかった。

「……はい」

腑に落ちないまま話は終わってしまい、倉田さんは「明日は早番だからそろそろ失礼するよ」と言い残し、そそくさと帰ってしまった。



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