契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
彰さんの別荘は小高い山の上にあり、海を見下ろせる眺望抜群の建物だった。
途中で夕飯の買い物を済ませ、ちょうど日が沈む時間帯に到着したため、二人でベランダに出て、真っ赤な夕陽に染められて幻想的な色に輝く海を眺めた。遠くには、いくつかの船影も見える。
「素敵……」
雄大な景色に、ただ感嘆の声を漏らす私。
すると、隣にいた彰さんがいつの間にか背後に回り、後ろから私を抱きしめた。
「二人きりでお前の顔見てると、さっき自分で決めた約束、もう破りたくなってくるな……」
感情を押し殺したような、吐息交じりの切ない声。
さっき決めた約束というのは……砂浜で交わした〝気持ちがはっきりするまでキスはしない〟というものだろう。
ということは、彰さんは今、私にキスしたい気分になってるってこと……?
顔は見えないけれど、背中に密着する温もりに心拍数が高まっていく。
私は胸元にある彼の腕に触れ、蚊の鳴くような声で言った。
「私は……できてますよ。心の準備」