上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※
突然はじまる恋

さっきまで眩しいくらいの西日も沈み、気がつけば空は薄暗くなっていた。

私は誰もいなくなったテーブルの後片付けを始めようとゴミ袋にどんどん詰め込んでいく。


秋になると各部署で毎年恒例のバーベキュー大会が行われる。
私が所属してるWEBデザイン課も例外はなくよっぽどの事がない限り強制参加。



「まぁ、バーベキューは楽しいからいいんだけど……」

心の声が誰もいないことをいいことに口から勝手に出てしまう。


別に会社のみんなと上手くいってないわけじゃない。いや、むしろ仕事は楽しいし、いい人ばかりで何も文句なんてないんだけど。


「きゃぁ〜 怖〜い」
「大丈夫だって!」


遠くから聞こえる楽しそうな声。

そう。
バーベキュー大会の後はこれも毎年恒例の肝試し大会。
始まったのだろう。
うちの会社はいまどき珍しく社内恋愛オッケーなことから、この肝試し大会が1番の盛り上がりタイムなのだ。


合コンのような盛り上がりが苦手な私はそれとなく気配を消してこの場に1人いる。
参加人数はざっと30人はいるだろうから私1人がいなくてもバレる事はないだろうしね。


ゴミを分別してそれぞれ袋に入れたあと、会社の誰かが持ってきてくれた包丁やまな板を洗い場にもっていく。


9月とはいえ30度を超える日中の暑さとは逆に夕方になると秋の涼しい風が体を通り抜けて心地いい。
洗い場の水はやや生温いけど冷たい水より汚れが落ちやすいからどんどん進んでいい感じ!


「私って単純なやつだなぁ」

気分が良くて鼻歌を歌いながら洗っていると、ふと視界の右端に人影のようなものが映った。

反射的に視線をチラッと洗い場の1番右端へ向けた瞬間心臓が飛び出るくらいびっくりして手にしてたトングが洗い場の底に落ちてしまった。



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