上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※

「亜子、早く結婚しよう」

俺はそれを振り払うかのように、もう一度亜子を抱きしめる。

「ふふっ、私たちもう半年後には結婚してますよ?」

亜子が笑ってそう答える。
そう、俺たちはあと半年すれば夫婦になる。
分かってはいるけど、こういう時なんとも言えない感情が押し寄せてくるんだ。


不安なのか?それとも嫉妬なのか?
考えたって分からない。

「ちょ、ちょっと尊さん!」

俺は抱きしめていた亜子をそのまま担ぐように肩に乗せベットルームへ連れて行く。
ベットの上に静かに寝かせるとそのまま亜子に覆い被さる。

「ま、待ってください! 夕飯の準備しなくちゃ」

「今日は外食にしよう」

「昨日もそう言って外食だったじゃないですか!」

服を脱がせようとする俺の手を止めながら亜子はどうにかして抜け出そうとする。

ぐぅぅぅ〜〜〜。
……俺の腹の音が鳴った…………。

「ふふふ、すぐ準備しますね! 待っててください」

そう言って亜子はベットから降りてキッチンへ向かう。
情けない……。

しかたなく俺も亜子のいるキッチンの方へ向かう。
自分でもよく分からないが亜子の近くにいたくてそのまま亜子の後ろに立っていた。

「……なんか、やりずらいんですけど」

「ん? そうか?」

手際よく作り始める亜子の後ろ姿を見つめていると、なんとも言えない愛おしさが込み上げてくる。

「あのう、尊さん?」

「ん? 何?」

「これじゃあ作れませんけど……」

俺の手は知らぬうちに亜子を抱きしめていた。


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