上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※

唇を尖らせて答える私はいくつになっても涼太の前では子供になってしまう。


『仕事なのはわかってる。だが、今年は必ず帰ってくるんだぞ!』

涼太は何度も同じことを言った後『また電話する』と言って電話を切った。


去年のお母さんの誕生日、仕事の締め切りが近いのを理由にプレゼントに手紙を添えて送ったんだっけ……。
仕事が忙しいのは本当だけど……。


ソファーに体をあずけながら向かい側にあるミニチェストの上の写真を見つめる。


パパとママ。
お父さんとお母さん。
……どっちも大切な私の両親達。



桜の木の前で肩を寄せ合って笑っている30代の男女の写真は私の生みの親。
この写真を撮った帰り途中、事故に遭いパパとママは私を残して亡くなってしまった。
7歳だった私はその時のショックが強すぎてか今でもその日のことを思い出せないでいる。


もともとパパとママは周囲の反対を押し切って結婚したらしく、一人ぼっちになった私を誰が面倒みるかで親戚は揉めてばかりだったらしい。


見かねた涼太のお父さんとお母さんは私を育てたいと申し出てくれて、その後養女として藤井家に迎い入れてくれたんだ。

< 20 / 183 >

この作品をシェア

pagetop