上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※
遠い記憶



スッキリと晴れた日曜日の朝、私は鏡の前で突っ立っている。


仕事中に結城課長から話があると言われ会議室に行くと、急に両親と会ってほしいと言われた。
付き合ってる人がいると話したら会ってみたいと言われたらしい。


何を着ていけばいいのかな?
急すぎて何も用意できなかった。
軽い気持ちで行けばいいと結城課長は言うけれどそんなこと言われてもやっぱり緊張する。


着てみた服はお母さんの誕生日の食事会の為に用意してたネイビーのジョーゼットワンピース。
あまり上品すぎないようにグレーのカーディガンを合わせた。


約束の時間ピッタリに結城課長から連絡が入る。
外に出ると車の横で待っている結城課長は白のティーシャツの上にグレーのカラーシャツを羽織り細めの黒いパンツ姿で立っていた。


休日に会う事が少ないので私服姿を見るのは新鮮な感じがする。

結城課長は車の助手席のドアを開けて “ どうぞ ” と掌を座席側に向ける。
私が助手席に座ると優しくドアを閉め結城課長も運転席に戻った。


車の事は詳しくないけれど、この車が外車だって事は私でも知ってる。
涼太が車好きで買いかえるたびにいろんなパンフレットを見せられてさんざん聞かされたっけ。


「服、似合ってるな。 いつもパンツスーツばかりだもんな」

「は、はい?」

車の中で景色を眺めていると耳を疑うようなセリフが飛んできた。

「何? 思ったこと言っただけだけど」

「あ、ありがとう……ございます」

なんなの?
どうしたの? 結城課長!
褒めるとか今まで言ったことないのに!
なんか調子狂うな……ただでさえご両親に会うの緊張してるのに。


「あ、そういえば今日は名前で呼べよ」
結城課長は更にハードルを上げる。

「な、名前で呼ぶんですか?」

反論してみるも「家族の前で結城課長も変だろ?」とごもっともな意見を言われそれ以上何も言えなかった。

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