突然ですが、兄貴が出来ました!

~先輩との出会い~

俺と先輩との出会いは、蒼ちゃんが高校に入学した最初の試験期間だった。
蒼ちゃんは高校に入学して間もなく、生徒会のお手伝いで帰りが遅くなる事が増えてしまった。
その為、俺は学校がある日は蒼ちゃんと会えなくなってしまい、凄く寂しかった。
そんな気持ちを抱えていると、試験前一週間は部活や生徒会活動がお休みだと聞いて、その日、俺は蒼ちゃんの帰りを今か今かと待っていた。
俺は蒼ちゃんの家のリビングで、蒼ちゃんの弟であり俺の幼馴染でもある章三と二人で、テレビを見ながら蒼ちゃんの帰りを待っていた。
すると、ドアが開く音がして
「ただいま」
と言う蒼ちゃんの声に、俺はリビングを飛び出した。
「蒼ちゃん、おかえりなさい!」
玄関に居るであろう大好きな蒼ちゃんに抱き付いた…筈が、抱き付いた感触が華奢な蒼ちゃんの身体とは全く違う、鍛え上げられた逞しい身体だった。
抱き付いたまま固まっていると、抱き付いた人物の背後から
「翔、荷物これだけ?」
と聞く蒼ちゃんの声がした。
驚いて顔を上げたその瞬間、俺の唇に柔らかい感触が触れる。
そう…、俺を見下ろした相手の唇と、俺の唇が触れてしまったのだ。
驚いて目を見開いた俺の視線に、やっぱり驚いた顔をした漆黒の切れ長の目が映る。
間近で見た顔は、綺麗に整った顔立ちだった。
が、のんびりしている場合では無い。
「ぎ…ぎゃ~~~!」
俺は悲鳴と同時にその人物から飛び退いた。
離れて見たその人物は、スラリとした身長に小さな卵型の輪郭。
筆で描いたような凛々しい眉に、切れ長で奥二重の目。
スーっと通った鼻筋に、薄く引き締められた唇。
……唇。俺が唇を見て、思い出して真っ赤になっていると
「葵!どうした!」
慌てた章三が駆け寄って来た。
手の甲で唇を隠してパクパクと口を動かしていると、蒼ちゃんが
「章三。悪いけど今日、僕の友達が泊まるから、来客用の布団を出してくれる?」
そう言って、章三を玄関からリビングへと押し出した。俺と章三は、蒼ちゃんの言葉にあまりにも驚いてしまい
「ええ!」
と思わず叫んでしまっていた。
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